決勝再試合

王さんも大ちゃんもできなかった悲願!

早稲田実4−3駒大苫小牧

旅の続きの始まり。早実のエース斉藤が駅のホームに立ったとき、来るべき男はそこに立っていなかった。駒大は、今日も先発のマウンドに2年生の菊池を送り、田中はベンチスタート。「何故、先発しないんだ」斉藤は、立ち上がりから3日間連投とは思えない快速球で2奪三振のスタート。まるで、田中へ訴えかけるかのような投球だった。その裏、早実打線が菊池を捕らえ1点を先制。ここで、ようやく田中がマウンドへ。だが、乗り遅れた代償は大きかったのか、田中は失点を重ねる。駒大打線は、斉藤から思うように安打を放つことができない。
4−1。早実リードで迎えた9回表。フィナーレは近づきつつあったが、三連覇への執念は並々ならぬものではなかった。二番三木が執念の安打で出塁した後、三番中沢が左中間へ2点本塁打で1点差。だが、時に本塁は追撃の流れを断ち切る場合がある。斉藤は、1点のリードの重みを冷静に受け止め、二人を討ち取り駒大の流れを断ち切った。あと一人。打者は、田中。運命が再び二人を誘った。スタンドは、三振か本塁打しか望んでいない。ほかの結末は考えられなかった。それを、理解しているのか斉藤は追い込んでもストライクゾーンに直球を投げ込む。田中は、それに答えフルスイングで粘る。そして、この夏948球目。144KMの速球に田中のバットが空を切った。歓喜に両手を上げる斉藤。うっすらと笑みを浮かべる田中。二人の旅が終わった瞬間だった。
王貞治荒木大輔が成し遂げることができなかった夏制覇を斉藤は果たした。3連覇はならなかったが、駒大苫小牧そして田中の評価が下がることはない。ただ、悔いが残るのは田中には先発してほしかった。田中がマウンドに上がる前に、失った1点だけ届かなかったことに三連覇を成し遂げることができなかった重みがある。
夏の終わり。両チームのどちらかしか得ることができない大優勝旗。勝負の厳しさと難しさをこの二日間教えてくれた。そして、それ以上に高校生の一つ一つのプレーにメッセージがあるように感じたこと。
また、来年の夏、新たらなドラマが演じられる日まで。