その3

これはフィクションです

シャム猫の名はエリー。サザンのミュージックが流れ、ワンフレーズカラオケで叫びたくなる名前だ。
小心者のくせに、4年に一度の思い込みから、エリーとの接点を求めるあつかましさは持っている。あつかましさは良く言えば積極的ともいえる。常にこれを持ち合わせていれば、苦労しないのだろう。これも、やはり4年に一度の魔法にかかったゆえに成せるのだ。
エリーと初めて会話を交わす機会は偶然訪れた。事務所に彼女が訪問してきたのだ。慌てて、軽いジョークでその場を乗り切ろうと努力したのだが、心臓の鼓動が早くなるばかりで、舌がまわらない。
「あなたって、楽しい人ですね」と別れ際に笑顔で声をかけてくれたエリー。不器用な立ち回りが逆にに好印象を与えたようだった。声をかけられた後、彼女が立ち去った跡のエレベーターの前で硬直していた。4年ぶりのビッグウェーブ。恋の予感は確信へ向かっていた。
続く